非正規雇用の格差是正を!2020/10/13

非正規社員に対する退職金やボーナスの支給が最高裁判決で認められず、逆転敗訴した二つの訴訟。
私も怒りを禁じえない。
というか、はらわたが煮えくり返る思いだ。

落胆「不公平感募る」=「最低裁だ」憤る原告―非正規訴訟で逆転敗訴
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E8%90%BD%E8%83%86-%E4%B8%8D%E5%85%AC%E5%B9%B3%E6%84%9F%E5%8B%9F%E3%82%8B-%E6%9C%80%E4%BD%8E%E8%A3%81%E3%81%A0-%E6%86%A4%E3%82%8B%E5%8E%9F%E5%91%8A-%E9%9D%9E%E6%AD%A3%E8%A6%8F%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E3%81%A7%E9%80%86%E8%BB%A2%E6%95%97%E8%A8%B4/ar-BB19YmKC?ocid=msedgntp

大阪医科大学の研究室で秘書のアルバイトをしていた50代の女性の訴えに対して、
判決で、最高裁判所第三小法廷の宮崎裕子裁判長は、
「大学では、正規の職員は業務内容の難易度が高く、人材の育成や活用のために人事異動も行われ、正職員としての職務を遂行できる人材を確保する目的でボーナスが支給されている。一方、アルバイトの業務内容は易しいとうかがわれる」と指摘し、
「(アルバイトに)ボーナスが支給されないことは不合理な格差とまではいえない」と判断したという。

また、東京メトロの子会社「メトロコマース」の契約社員らの訴えに対しては、
最高裁判所第三小法廷の林景一裁判長は、
「退職金は労務の対価の後払いや、続けて勤務したことに対する功労の性質もある。正社員は複数の売店を統括し、サポートやトラブル処理などに従事することがあるが、契約社員は売店業務に専従し、一定の違いがあったことは否定できず、配置転換も命じられない」と指摘し、
退職金を支給しないことは不合理な格差に当たらないとする判断を示したという。

今回の裁判では、裁判長があまりにもアルバイトや契約社員を見下しているし、アルバイトや契約社員の仕事は簡単な仕事と決めつけているし、アルバイトや契約社員の業務は功労に値しないと言っているも同然だ。
不愉快極まりない。

アルバイトも契約社員も、生活がかかっているから必死に頑張っている。正社員に比べて、いつ解雇されるか分からない不安定な立場だから、手抜きなんか出来ない。納得できない事があっても、契約を更新して貰えなくなるかもしれないと思えば、我慢しなければならない。
それに、現場に出ればアルバイトも契約社員も関係なくなってしまうし、立場が弱い方が多くの仕事を振られてしまうのは世の常だ。
売店などでは、正社員とか契約社員とかお客さんはいちいち考えない。
「私は契約社員だから分かりません、できません」などと言うわけにはいかない。
私は教員以外にも様々な仕事を経験し、嫌な思いも沢山しているから身に染みて分かる。

それに、何より重要なのは、正規の採用枠が少ない為に、仕方なくアルバイトや契約社員として勤めざるを得ないという事実を全く無視している点だと私は思う。
能力が低いからアルバイトや契約社員に甘んじているわけではないのだ。正社員のほうが年齢が若く経験も少なくて仕事ができないという場合だってある。今回の場合だって、両ケースともに、アルバイトや契約社員とは言え経験が長かった。
給与が安い事やボーナスや手当てが無い事に納得してアルバイトや契約社員を自ら選択したわけではなく、多くの非正規労働者は、他に道が無かったから、仕方なく非正規労働者となったのだ。

なぜ現在のように非正規雇用が拡大したかと言うと、私の記憶では、小泉純一郎元総理の規制緩和改革から始まっている。
当時は小泉元総理は大変な人気で写真集まで出され、私の同僚も購入していた。
私は、非正規雇用を拡大させる小泉元総理の改革に当初から大反対だったので、なぜ世間の小母様方が写真集まで買って熱狂するのか不思議でならなかった。
規制緩和と言うと聞こえは良いが、要するに、企業が安い労働力を手軽に使い捨てられるようにしたのだ。国際競争力を高めて日本の企業が勝ち抜くために、良質で安価な労働力が必要だったのだ。
物は言いようで、正社員に採用されない人が非正規であれば雇用されやすくなるとも言えるだろうけれど、雇用条件に格差があり過ぎるのだから、残念ながら、労働者の為の改革とは言えない。
そして今や労働者の4分の1は非正規といわれ、格差は広がるばかりだ。
かつては1億総中流社会と言われた日本だが、もう何処にもその面影はないように思える。

「同一労働、同一賃金」などと言われても、哀しいかな、そう簡単に労働者が平等に扱われることはない。
年功序列だし、上司に部下は物が言えないし、今や正社員でも昔ほど安泰とは言えない時代ではあるが、それでも、非正規労働者は圧倒的に立場が弱いのだ。
コロナ禍でも、多くの非正規労働者が派遣切りされているというし。

政治家や高学歴の学者や大企業の取締役や、そんな著名人たちだけが社会に貢献しているのではない。
高名な建築家による構造物も、多くの現場労働者たちが居なければ作ることが出来ない。
政治家は、政策を作って社会を動かしているのは自分たちだと思っているかもしれないが、実際に社会を支えているのは、名も知れず低賃金で働いている人達なのだ。
ある意味では、低賃金で地味な仕事をしている非正規労働者こそが、最も社会に貢献しているとも言えると思う。

司法は、弱い立場の非正規労働者の味方であって欲しい。

私は、日本から非正規雇用を無くしてほしいと思う。正規も非正規も無く、労働者として同等の権利を享受できる社会になって欲しい。



以下、蛇足ながら私の体験。

※ 私が大学1年の頃、山〇海苔のメーカーからデパートのお歳暮コーナーでのアルバイトを依頼された。山〇海苔については、メーカーさんより説明と指示があり、私は一生懸命に接客したのだが、昼直前、突然つかつかと現れた黒い背広姿でフロア部長のバッジを胸に付けた男性店員が、私に〇本〇海苔コーナーに関して文句を言うので、「私は山〇海苔のメーカーのアルバイトなので、〇本〇海苔のコーナーに関しては分かりません」と答えると、
「たとえそうでも、同じ売り場に立つ以上、違うメーカーの事は関係無いで通ると思うのか!!」
怒りに任せて怒鳴られた。
私は悪くない。学生アルバイトの身で、立場以上の、他のメーカーの売り場に首を突っ込む方が間違っている。〇本〇海苔の売り場に気に入らない事があるなら、〇本〇海苔の担当者に言えばいいのだ。隣の売り場に居ただけで責任を押し付けられるなんて、あまりにもひど過ぎる。事情を知らないお客さんに言われたなら、仕方ないと我慢も出来るが、相手は事情も知るはずのフロア部長。
周りにいたデパート店員も、私を気の毒そうに見るだけで誰も助けてはくれなかった。フロア部長は、私に怒鳴ると、さっさと立ち去った。
私は、あまりの理不尽さに、昼食時間、従業員用のトイレで一人わあわあ泣いた。泣くしか出来なかった。泣いていると、山〇海苔のメーカーさんが、ドアの外から「大丈夫? 話は聞いたよ。泣きたいだけ泣いていいよ」と声を掛けてくれた。
「大丈夫です」と答えるしかない。
あの時のフロア部長は、もしかしたら、私がアルバイトだと知っていて怒りをぶつけたのかもしれない。デパートの制服ではないエプロン姿で、一番年若く、一番が弱い立場であることは、一目で分かったはずなのだから。
後から、他の店員に聞いた。災難だったね、あのフロア部長は、日頃からああいう態度なのだと。

※ 私が大学4年時の採用試験は超狭き門でクラスから誰も合格できず、私は某有名私立大学付属高等学校で週にわずか12時間の非常勤講師をしたのだが、交通手当も住居手当も無く、行事や祝日で授業が無くなればその分の時給は支給されず、夏休み中は給与ゼロで、会議や行事は給与は出なくても勉強のために出席せよと言われるし、採用試験当日の課外授業を命じられるし、新年度の契約更新については2月になっても3月になっても何も言われず、どれだけ理不尽な思いをしたか分からない。

※ 他県で別の私立高等学校に採用されるも、理事長の横暴やその言いなりになった管理職、明らかにおかしい事がシステム化され、異議を唱えると、管理職に洗脳されたかのような同僚に窘められ、生徒が問題を起こせば夜中でも電話でたたき起こされ、ノイローゼ寸前に。

※ 県の採用試験に合格し、初任者とはみなされずに最初から担任を命じられるも、私よりも年齢も経験年数も上な同僚が、量的にも質的にも仕事をしておらず、暇にしていることに不公平感を抱かずにいられなかった。

※ 職員会議で決定したことが、校長によって覆されることがどの学校でも度々あり、皆で異議を唱えると、校長曰く
「学校における最高(終)決定機関は、職員会議ではなく校長である」
一番民主的であるはずの学校は、実に封建的な縦社会だった。

※ 私が校長と共に他県で行われる研究会に出席する際、校長は旅行命令書から何から全ての手配を私に任せた。任せたというと聞こえが良いが、自分は何もせずに私にさせたという事。そして私は、事務部で記入された出張手当の金額を見て、理不尽で不愉快な事実を知った。実際に研究発表をするのは私であり、同じ交通機関で同じ会場に行き、そこで準備される同じ弁当を食べ、同じホテルに宿泊し、自己負担額は同じなのに、管理職というだけで、日当どころか交通手当も宿泊手当ても昼食手当ても2倍近く高い金額が記入されていた。校長が自分の出張手続きくらい自分ですれば、私は理不尽な事実を知って不愉快になることもなかったのに。

※ 当時はパワハラやモラハラという言葉は無かったが、私は当時の校長にパワハラやモラハラを受け、過重労働で心身ともに限界となって、年末の希望届けで退職を願い出たが、翌年に私に頼む予定の仕事を頼む人が居ないからと聞き入れられず、翌年は死に物狂いで一人七役ほどの仕事をこなし、今年こそはと退職を申し出るも、再び慰留され、「あと1年と言う約束でした」と伝えて退職したのだが、それほどの仕事ぶりであったのに、暇を持て余したような定時帰宅の年上教諭でも、給与は年功序列だったことは、本当に割に合わないと感じた。

※ パワハラ、モラハラ、過重労働で一度は半年間の休職をしたほどに心身ともに限界であったのだが、退職前の私の年収は800万円ほどあった。ところが、その後に別の高等学校に請われて講師をすると、講師の立場ゆえ運営委員会に出席できない以外は全て他の正規教諭と同じかそれ以上の仕事をしても、年収は150万円以下に。これから採用試験を目指す若い年齢なら、経験も知識も不十分で仕方ないと思うが、一度退職したというだけで、それまでのキャリアも雀の涙ほどしか考慮されず、発言権も何もない虚しさ。

私は、母の介護のために、慰留された欠員補充の講師の仕事も断って、それ以降、現在も無職だ。講師の仕事を引き受けなかった第1の理由は母の介護だが、講師という立場では長いキャリアも高いスキルも少ししか生かせず、給与は全く労働に見合わず、会議に参加できないために決められた事に黙って従うしかなかったことも、かなり関係している。
運営委員会に出席できない以外は同じ仕事をしているのに、講師だというだけで年収は教諭の5分の1以下にしかならないことを知っていたから、本当に虚しくなった。月々の給与も半分程だったが、やはり大きかったのは期末手当(ボーナス)の差だった。

日本社会では、最初にレールに乗り遅れると、その後に遅れてレールに乗ることは難しい。そして、一度でもレールから離れると、もう二度と元には戻れないようだ。

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